mist-chair / 霧の椅子
霧のように曖昧な椅子。脚部がもやもやとした不思議な椅子です。実はこの椅子はアクリルで出来ていて、水滴なようなドットをグラデーション状に塗装することで、まるで脚部がすっと消えているような視覚効果をもたせました。遠くから見ると座面と背もたれだけがふわふわと浮いているようで、なんだか夢を見ているような、または映画の一部を切り取ったような面白さがあります。脚部はしっかりとした無垢のアクリルで作られていて、見た目とは裏腹に凄くしっかりしているので、安心して座っていただけます。
これは屋外展示のインスタレーションにあわせて制作した作品でした。屋外で椅子を展示するインスタレーションということもあり、単なる家具をデザインするのではなく、展示として新鮮さや面白さを感じるものを作りたいという漠然とした想いがありました。いつもは違った角度から、デザインの力で人を楽しませたり喜ばせることはできないか。そこで普段とは逆の発想で、椅子を作るときにやらないこと(できないこと)はなんだろうと考えたときに、頭をよぎったのが"脚がない"ということでした。
そもそも座面が浮いてでもしない限り、椅子には脚がないと座れません。しかし椅子には脚があるという概念があるからこそ、見る人をあっと言わせるような新鮮さや面白さが生まれてくると思うのです。それに脚がない椅子なんてまるで霧に座っているみたいで、なんとも詩的ではないでしょうか?そんな経緯からこの作品は生まれました。悩んだ甲斐もあってか、お客さんの反応は大好評。見ていたこちらも凄く楽しんだ展示でした。
サイズ:W350×D410×H715(SH400)
素材: アクリル、シルクスクリーン印刷
クライアント:プロトタイプ
Direction&design: Mitsuyoshi Kikuchi / Photo by Takahiro Sano